喪失 #3

26/35
1483人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
買い物も済ませてマンションに戻る 台所に立ってる弓槻を見て嬉しくなって、テンション上がったまま側に立って弓槻を眺める いくら眺めてたって飽きなくて、もう世界に弓槻しかいないんじゃないかってくらい、他の事が目に入らない ――そう、浮き足だっていた瞬間だった 「ふは、だってお前――俺の事、嫌いだろ?」 どこかで、そうあって欲しいと願っていたのは、自分にある罪悪感から少しでも逃れたかったから そのくせ――そうじゃなければ――もしかして そんな甘い考えを持ってしまった 「……はは、笑えねーっ、て。どんだけ」 でも、実際は違った 気まずい空気が流れて、さっきまで笑っていた弓槻の顔から笑顔が消えた ――やっぱり 最初から、わかっていたことなのに そう後悔していたその時だった 弓槻に油が跳ねて、驚いた俺は台所から弓槻を退かせた ――よくわからない不安にかられて、目の前が真っ暗になる
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!