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道標 #2
ヘッドフォンをつけてないから、視線は画面に向かってるか弓槻を見てるかで、BGMはもっぱら後部座席の幸せボケ夫婦の会話だ
悩みのなさそうなその会話を聞いていると、自分のしていることがとんでもなく低次元な気がしてきて軽くヘコむ。
「いっちょまえに怒ってんの?」
「怒ってない」
「嘘つけ」
「いーよもう」
沈んだ声は、怒っているというよりも、聞こえるか聞こえないかほど小さくなってしまっていて、――明らかに先程までの元気さは消えていた
「冗談だろ」
「わかったってば」
「かっ――」
「……か?」
「河合さんさ」
「誰よそれ」
「経理にいるだろ」
「――いたっけ、そんな人」
「知らねー」
酷い。酷すぎる、この男。
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