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「弟と二人。真央ちゃんと同じ高2」
「地元はこっちですか」
「いや、隣の県なんだ。自宅から通えない事もないんだけど、一人暮らししたくて大学の側にある安アパートに住んでる」
二人は公園内ある東屋に向かってぶらぶらと歩きながら話を続けた。
途中上村が「タオルのお礼」と言って自動販売機でジュースを買って真央に渡す。
「一人暮らしですか・・いいなぁ。私ずっと妹と部屋を共有なので、一人になるのすっごい憧れてるんです。・・・そっかぁ、県外に進学すれば叶うんだ」
「え・・ちょっと待って。真央ちゃんが県外に進学したら会えなくなるよ。せめて県内がいいなぁ」
上村が少し慌てた口調で話すのが可笑しくて、真央はぷっと吹き出した。
「やだなぁ冗談ですよ。私、進学は考えてませんから。ただ一人暮らししたいなぁって思っただけで」
「それならいいけど・・焦った。────それで、俺の事で他に聞く事は?」
「うーんそうですねぇ・・・あっ、名前まだ聞いてないです。苗字しか知らない私」
「あー・・・あんまり言いたくないんだけど」
上村が心底困った表情を見せた。
「もしかしてすっごいキラキラネームとか?」
「いやそれは無い。むしろもう少し凝ってほしかった位で」
真央は頭の中で簡単そうな男子の名前を考えた。はじめ、けん、たろう・・
「・・・大」
「だい・・・ですか?」
読み方は単純でも漢字くらいはと真央が思っていたら上村が右手を上げて
空に向かって『大』の字を書いた。
「・・・自己紹介の時にいつも思うんだけど、もうちょっとひねりが欲しかったよなぁ」
「んー・・・でも覚えやすくていいかも」
「いいよぉー、なんつったって小学一年生で全部漢字で書けたしね。俺だけだったかも・・」
「へぇ、そうなんだぁ・・」
二人を取り囲む空気が和やかになってきた頃、真央のバッグでスマホの着信音が流れた。
「・・・・すみません」
上村に断ってから見るとボート部の友人からだった。
─────みーちゃった。
ハートが飛び交う画面から顔を上げた真央は勢いよく立ち上がり周囲を見渡した。
向こうの方に自転車に跨る女子集団がこちらに向かって大きく手を振っていた。
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