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蒸気機関車は世界の中心である帝都の南西にある帝都郊外南西駅を出発し、シュガードーナツ湖を目指して走っていた。
この車両に乗っているのは帝都の南方にある外洋に面した港町からの観光客や、その港に接岸した客船でシュガードーナツ湖を目指して来た観光客達である。
その観光客達の中に、港町の近くの海岸で高級魚介類の養殖業を営んでいる会社の、経営者一族と社員の30人程のグループがいた。
彼らは今年高級魚介類の天然物の漁獲量が近年に比べ著しく低くかったお陰で、帝都に収めた養殖の高級魚介類が何時もの数倍の値段で捌けたことにより、利益が増し社長の発案でシュガードーナツ湖の観光を楽しみにしている社員旅行の一行である。
「背中がイテー」
「仕方が無いよ、兄貴、三等寝台車なんてこんな物だろう」
「まあな、親父が奮発してくれたお陰で俺達も社員旅行に連れて来て貰えたんだから、文句を言ったら罰が当たるな」
帝都郊外南西駅からシュガードーナツ湖まで20時間の距離だが、港町からは70時間程の距離があるため車内で2泊しなければならなかった。
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