番外編 不快な香りに隠した想い

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ひょい、とそれを受け取った彼は、気まずそうな顔して苦笑いを見せた。 本物の双子ではないにしても、この2人、本当によく似てる。 気付いていないのは多分、本人たちだけだろう。 「駅まで送ろうか?」 「いや、大丈夫だ。世話かけて悪かったな。家の人にも謝っといてくれ」 「ん、じゃあ気を付けて」 いつだったかと同じように、そろそろと階段を降りた彼を玄関まで見送って、パタリと扉を閉じる。 もっと聖司くんに詰め寄って、涼介との仲を見せつけてやろうかとも思ったけど。 そんなことしなくても、彼は涼介にめろめろみたいだったし。 「ほんっと、手のかかる夫婦」 ぐぐっと体を伸ばしながら、明日には照れ臭そうにしているだろう涼介を思って苦笑いが出た。
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