第1章 檻の中の双子

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「おはよう。朝飯出来てるから、顔洗ってこい」 「……」 期待していたわけじゃないけど、やっぱり返事はなく、ぺたぺたと足音だけが遠ざかる。 俺が10年間双子の弟だと信じていた、篠崎 聖司。 本当は赤の他人で、よく言えば幼馴染みにあたるこいつとの距離が、この8年で1番変わってしまった。 それまで双子だと思っていたからか、側にいるのが当然で。どこにいくのも、何をするにも2人一緒でないと気が済まない。 互いにそういうところがあったと、母さん、もとい優美さんはよくそう言っていた。 それが、中学に上がってしばらく経った頃、急に聖司に避けられるようになった。 最初はぎこちなかったその避け方も、少しずつ目が合わなくなり、最終的には嫌がらせに変わった。 俺が風紀委員なのを知っていて、わざと校則違反をしたりと、幼稚なものが多かったが、そこに暴力が混ざるのも日常茶飯事で。
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