0人が本棚に入れています
本棚に追加
---アメリカ LA郊外某所---
私の名はポール。元は汚れ仕事をしていた、といってももう十年も前の話になるがな。
今はしがない街の清掃員のおっさん。何ら問題なく約束されたような日常の延長線上をたどっているだけなのさ
そんな私も今日で30のバースデーを迎えた。
ガールフレンドのミランダは私を見つめ、明るく微笑みハグをしてくれたし愛犬のジョンは尻尾を全開に振りながら私に飛びついてきた
こら、顔をこんなに舐めるんじゃないよジョンははは
家族や親戚もみんな揃ってシャンパンで乾杯!ってところだ
なんてことない平和。
そして最高にハッピーな瞬間に舞い降りた、最高にアンビリバボーな展開。
それは一通の着信音だった。
「すまない、出てもいいかな...」
「ええ、ノープロブレムよ」
ミランダに承諾を得た私は、なるべくパーティーの雰囲気を壊さないように携帯電話をとりだし眺めた。
携帯画面に表示された通話の相手は意外な相手だった。
私の中の一時のハッピータイムに句読点を打つことになりそうだ。
これは席を外さねばならないと直感し通話口を耳に当てたままそそくさと別室へと向かった
ソファーに腰掛け、"そいつ"と会話をはじめた
「やぁやぁ久しいな友よ、今日は何の日か知ってるかい?そう僕のバースデーさ!」
「ふざけているのか?俺様がそんなことでわざわざ連絡すると思うか?」
「ああ...やはりジョークは君には通用しないか。何も変わってないな、昔っから」
「余計なお世話だポール」
「そういうところも実に君らしい...なぁ、アルノー」
「十年ぶりってところか?」
非常に低く、今にも相手を殺しそうな声で話してくる電話の相手はアルノーというフランス人の男。
今から十年前、行動を共にしていた私の頼もしいバディーの一人だ。
「ああ、あれからそんなに経ったのか。早いものだな......」
「昔話に浸っている場合ではないぞ。ポール、招集だ。」
「......っふ」
「どうした?」
「その言い回しを聞いてポッと昔の思い出がフラッシュバックしたのさ.......ただそれだけだ」
「ならいい。場所は十年前と同じいつもの喫茶店だ。わかるな...?」
最初のコメントを投稿しよう!