1人が本棚に入れています
本棚に追加
気がついたら、たくさんの花が咲き乱れる花壇の上にいた。
身体中が痛かった。
右を向くと、私が担任をするクラスの男子生徒が倒れていた。
呼吸が聞こえるから気を失っているだけだろう。
教室の窓から飛び降りようとする生徒を止めようとして、一緒に落ちたようだ。
私は仰向けになって、落ちた教室の窓を見た。
あの日、君はこうして落ちた教室の窓からカーテンがなびいているのも、慌てて身を乗り出し覗き込んだ私の顔も見ることなく、逝ってしまった。
私には後悔しかなかった。
苦しくて苦しくて、君も、あの日見た光景も忘れられなかった。
懺悔ではないけど、あの日の君を追いかけるように、私は母校の教師になる道を選んだ。
「先生!大丈夫!?」
慌てた様子で同じクラスの女子生徒が窓から身を乗り出す。
あの日の自分と重なって、視界が滲んでいく。
君の最後の笑顔が鮮明に蘇る。
ああ、君が助けてくれたんだね。
君と同じ時間、同じ場所、同じことを思った彼を助けてくれた。
私を助けてくれた。
「…ぅ…、う、うわーん」
私は良く分からない感情の中で、子どものように泣きじゃくった。
私は、君が私という人間を知っていてくれたことが嬉しかった。
あの日、どうして逝ってしまったのか、教えて欲しかった。
やっぱり今でも君が大好きで、もう一度会いたかった。
会いたくて、会いたくて、たまらなかった。
もう会えなかったとしても、どこかで君も元気で頑張っているんだと思っていたかった。
私は、ずっとずっと泣きじゃくっていた。
君の笑顔が忘れられない。
「大丈夫。君は生きているから」
最初のコメントを投稿しよう!