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振り返ると、んふふと含み笑いをしたナリが俺の顔を覗き込んでいた。
「なになに、テンション低いじゃない礼さん行っちゃって寂しい?」
…あきらかに面白がってんな、こいつ。
「…別に。寂しくない。」
「…あんた本当に素直じゃねぇな!」
そう言って苦笑いしているナリを見ながら、自分でも素直になれない自分に情けない気持ちが湧き上がってくる。
分かってるんだよ。
自分が素直じゃないのも、礼くんに甘えてばっかりなのも。
「…会いたいならそう言えばいいのに。」
困ったおじさんだなぁ、もう。とナリが俺を抱きしめる。
俺だって言いてぇよ。
でもさ、俺の中の頑固な気持ちがそうさせてくれねぇんだ。
抱きしめられながら少しおセンチな気分に浸っていたら、
「ナリちゃ~ん。そろそろ帰るよー!」
荻野ちゃんがナリのバッグを右手に掲げてブンブン振り回しながら近づいてくる。
「ちょっと!鞄の中身ごちゃごちゃになっちゃうだろ!」
ナリが怒って俺を抱きしめたまま荻野ちゃんを蹴り飛ばすけど、荻野ちゃんはあひゃひゃ、ごめんごめんなんて言って全然反省していない様子で。
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