第2章

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 二歳年下で高校生に成り立ての彼との初めてのデートは、十時に駅前の時計の下で落ち合う約束をした。私と彼には初々しさや緊張感なんてまるで無い。私は自分に彼氏というポジションの人物がいるならそれで良いと考えているし、彼はモテるチャラ男ランキングというものがあれば上位十位に入るであろうくらい軽い男なので、もはや熟練されたカップルのように、顔を合わせると同時にじゃあ電車に乗ろうと言ってきた彼に言われるがまま黙って付いて行った。 「この主人公の後輩刑事の子さ、めっちゃ可愛くない?」 「可愛いね」 「付き合いて~」 「いいじゃん。付き合ってきたら?」 「…だね。そうするわ」  どこに行くのかと思えば家に連れ込んで、当たり前であるかのように録画したドラマを観始めた。一目もはばからずカフェで堂々と世界中の女性を愛していると言えるほどの男である。てっきり付き合って早々、初デートであるにも関わらず行為に及ぶつもりかと疑ったのに、居間に案内されテレビをつけ出した。その瞬間、まさか自分の性癖を教えるためにアダルトビデオを流し出したのかと思ったら、濡れ場があるとは到底思えない刑事ドラマが流れ出した。一緒に観ようと言われて訳も分からないまま眺めているが、わざわざ恋人同士で、しかも初デートでドラマを観る意味が分からない。  そもそも、交際してすぐに家に呼ぶなんてどうかしている。  私達の場合、出会ったのも交際を始めたのも同じ日なので、例外なのだが。それは置いておいて、  初デートといえば、一般的には水族館や動物園、遊園地、映画館といったところが主流では無いのか。水族館や動物園では同じものを見て感動を共有するとか、遊園地ではアトラクションを楽しみながら盛り上がったり嫌がる彼女を無理矢理お化け屋敷に入って守る事で男らしさを見せつけるとか、映画館では映画を楽しみつつも暗闇の中で手を繋ぐか繋いでくるかに胸をどきどきさせていたらいつの間にか映画が終わっていて内容を全く覚えていないとか…そういうのを楽しむものだと思っていた。こう考えてみると初デートには映画館が妥当だ。全ての意図は私の憶測に過ぎないが、少なくとも私が過去に交際してきた男性はこれらを初デートの場所に選んでいた。
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