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海の浅瀬でノリカとマリが制服ではなくビキニ姿ではしゃいでいた。砂浜に座るヒデトと目の保養になったなとニヤニヤしていたが、事態は急変した。
「どこから帰ればいいのよ」
困惑するノリカは、それぞれの顔色を伺った。誰も知るはずもなかった。明るいが取り柄のヒデトも段々と空元気で場を和まそうとしている。マリは泣きたそうな顔を必死に抑えていた。
その時、足音と共に声が近づいた。
「僕が名前分かる?」
制服の男子生徒が、どこからともなく現れた。陰険な雰囲気を感じて、みんな自然と後ずさった。
「だ、誰だよお前は」
「僕のこと分からないんだ」
訪ねても答えてはくれず、無表情にこちらをみつめる。
「あ! あいつよ! よく一人でいるから、あたしたちがいつも遊んであげたあいつよ!」
思い出したノリカは声を上げて、男子生徒を指差した。そうだとそうだとヒデトも分かったみたいだ。
「僕の名前分かる?」
男子生徒は繰り返し同じ質問をするも、俺も含めて名前を口に出す者はいなかった。
男子生徒は最後にこう言った。
「いつか思い出してね。時間はたくさんあるから」
その次の瞬間に強い風が視界を覆って、目を開けると男子生徒は消えていた。
「とりあえず、ここから出る方法を考えよう」
あれは幻影なのか。これは夢なのか。
俺たちは、脱出方法を模索した。
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