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「今日は試食会どうだったの?」
「感想を述べて真面目に終わったよ?オーナーも普通だったし、しいて言えばパティシエさんがイケメンだったくらいかな」
シドーは顔を上げニヤリと笑うと、その人もう餌食になってるのかもと、ドキッとする事を口走る。
「外人さんだけど、雰囲気シドーに似てたよ」
「怖い事言うね、行く時は気をつける」
シドーの弱点を見つけたようで、少し楽しい気分になった。
「ハル、黙々と食べてるけどナポリタン気に入ってるの?」
声を掛けられるまで夢中だったハルは、口の周りが微妙に汚れている。
「ここ付いてるよ?」
手で合図を送ると恥ずかしそうに拭っていた。
「思い出の味だから……」
思わず私も顔を赤くしていると、シドーは二ヤリと口角を上げ、次はどう遊んでやろうと企んでるようにも見える。
「あの頃の二人は、見事に結ばれましたって微笑ましいエピソードだよね」
もっと意地悪な事を言われると思っていたので、予想外の言葉に目を丸くして驚いた。
「ハルから話聞いて可哀想だな俺たちのアイドルって、心配はしてたんだよ?周りが幼かったが故にモエは傷ついた訳だし」
「そうかもしれないね……」
シドーみたいな大人な思考の人が居たら、もっと変わってたかもしれない。
「でも今はお似合いな二人だから、思う存分楽しんだらいいよ」
「邪魔してるお前が言うかね……」
「いやいや、家で愛を育むだけが『楽しむ』じゃないよ?」
ギクリとする一言に今度は身体が強張った、先程までそんな事をして現在に至っている。
「俺はまずそこから楽しみたい、まだまだ足りないぐらい」
平気で言えるハルが羨ましいが、私は席を外したい気分だ。
「まだ若いね、もう少し歳を重ねると俺が言った意味きっと分かるよ」
――シドーは何歳だと聞き返したくなる。
アイスコーヒーを準備して食器を片づけていると、まだその話で盛り上がっている様子。
「ねぇモエ、今ならロリコン女とおませな男って言われてもきっと平気でしょ?」
リビングからシドーが突然聞いてきたが、熟女相手の彼に言われると、私達なんてまだまだ青い。
「そうだね、上等ですって言い返せるかも」
ハルの隣に座ると彼は照れながら目を細め、柔らかい笑顔をこちらに向けてくれた。
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