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医務室の奥にある私室で待っていると、後片づけをおえたイグノトルが入ってきた。
「あ」
「お待たせー、絵本どこ?」
「よっ、読まないで待ってたよ。はやくっ」
ベッドに腰かけ、イグノトルを誘った。
「かわいいねえ」
イグノトルはティオが膝に置いていた絵本を取りあげ、すぐ隣に腰かけた。
「ん、これだ。懐かしいねえ」
ふたりの膝に絵本を置いてページをめくり、読みはじめる。
ティオのすぐ耳元で、照れくさそうに声をおさえて。
「ああっ、ぼく、どきどきして……だめ」
「なに言ってるの、冒険はこれからだよ」
ティオがおともだちをさがして地上へ降りるところだった。
「ち、地上って、どんなとこだろうね」
イグノトルが絵本を閉じた。
「え、な、なに?」
「私は……君を地上へ出すつもりはない」
「でも、ティオのお役目は地上で人間の失くした夢を取り戻してあげること……って書いてあるよ?」
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