1 花火

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1-5-11 「私たち天の民はね、地上の空気があわない。ティオは比較的耐性があるとされてるけど、それは清浄な空気のある場所を探す能力に長けているだけだ」 「イグノトルさま……?」 「一歩まちがえば、どうなると思ってるの」 「あ……」 「私はティオじゃない。君を助けには行けない。そんな危ない場所へ君をひとりで行かせるなんて……できない」  思わず、ティオが吐息した。  イグノトルの気配が甘すぎて、耐えられない。 「ごめ……なさ……」 「なに、泣いてるの?」 「……ん。だって……」 「おいで」  絵本をどけて、両手をひろげる。  迷わずその胸に身体をかたむけた。 「でも、イグノトルさま。ティオは地上に行かないと……結婚できないんだよ」 「誰と?」 「え……」  甘さが消えていく。  イグノトルの気配が、不自然に隠されていく。
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