1 花火

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1-6-12 「あ、あの、ぼく……っ」  あなたと、結婚したい。 「冗談でも、やめてくれる?」  視線をそらし、イグノトルが自分の机のほうを見た。 「え……」 「……苦しいから」  いきなりきつく抱きしめられ、そのままベッドに倒された。 「あっ」 「大人になったら君は、私のものになる。そう約束したよね」 「……はい」 「じゃ、地上へ行く必要はない。そうだよね」 「でもぼく、どんなとこだか気になるんだ」 「あー、こことは違う世界だからね。仕方ないか」 「う、……うん」 「ま、せっかく再会の池が近いんだし、社会勉強だと思って見に行こうか」 「ええっ、そ、そうだったの?」  あの場所が、すぐそばにあったなんて。 「そうだよ。もちろん無許可での降下は禁じられてるから上から覗くだけだよ。もし本当に降りるなら、適性検査を通って講習を受けないとだめだからね」 「そうなんだ……」
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