1 花火

9/38

65人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
1-8-14 「ぼく、前の主のこと、ぜったい好きにはなれないし、わかりあえるなんて思えないよ」 「いや、ただ、諦めてるんだよ。私は誰かを嫌いだーってはねつける勇気がないだけ」 「そんなこと……」 「あるよ。嫌われてるからっていちいち態度変えるの面倒なの」 「うーん……」 「嫌われてる原因がわかってるからね、そこを避ければあっちも譲ってくれるよ」 「その結論へ行き着くのがわからないよ」 「そう?」 「ぼく、前の主はぼくの声をきらってたからずっと黙ってたけど、なにも変わらなかった」 「ああ、それはティオっていう生き物そのものを蔑視してたんだよ。君のせいじゃない」 「あ……」 「ティオって生き物が大好きでたまらないひともいるから、ティオを養育するほうに適性検査がいるよ。ちょっと国王に意見し……」 「イグノトルさまっ」 「バレた?」 「わざと話、そらしたっ」 「もー、行きたくないんだよ、私だって」 「まって。ぼく、一緒に行くよ」 「それは頼もしいね」
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加