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1-9-15
浅い森を抜けたところに、ひっそりとちいさな池が見えてきた。
「そういえば典医のひと、思ったよりあっさり許可くれたよねー」
「そりゃそうだよ」
「どして?」
「ティオが短命だから」
「え……」
「愛するひとを失う、あるいはそう思った瞬間に発症する死の病気のせいだよ」
「喪失の病……」
「そう。つまりは初恋が実らないとティオは死ぬんだよ。大人の姿で生まれる初代ティオの死因はほとんどが喪失の病だ。だから、短い命の間にできることは協力してやりたいっていう……ね、暗黙の了解がある」
「そうなんだ……」
「まあ君にはあまり関係ないけど」
「病気は持ってるけど、恋人が医師だからだいじょうぶっ」
「そうとも限らないけどねえ」
近づいてみると、池は月明かりに照らされ、きらきらと光っているが、それだけではない色に満ちていた。
「きれいだねー」
「変な色だね」
逆のことを言い、イグノトルが先に歩いていく。
「あっ、まって」
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