1 花火

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1-10-16 「ああ、地上の光景が池に映ってるんだよ。ほら、来てごらん」 「な、なに?」  そうっと近づき、池を見下ろした。  細い火柱があがったかと思うと、ぱあっと丸く開き、色とりどりの火の粉が飛んでいる。 「わ、わあっ、あれはなんの魔法なの」 「花火だよ。書物で読んだことがある。きれいなものだね」 「う、うん。わ、わあ……っ」  消えたはずの火の粉が色を変えて落ちていく。  消える間もなく打ち上げられ、次々とひらく。 「うわあ、うわあー」 「すごいね」 「あら偶然ねー、もう始まってる?」  よく通る女性の声に、ティオがう……、と身を引いた。 「国王……」 「わー、きれーい。ちょっと、早く早くっ」  渋い顔で後から姿を見せた王婿がイグノトルに気づき、会釈をした。 「まさかと……思うんですが」
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