1 花火

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1-12-18 「ぼくの主のせいで……ごめんなさい」 「あなたたちもそうでしょ?」 「はいっ」  気が合うわねー、とはしゃぎだす二人の背後で、王婿がまたため息を吐きだした。 「すいませんね、殿下。お邪魔したみたいで」  イグノトルが簡素な謝罪を口にした。 「こういう綺麗なものでも見せればもしや……とね」 「野望があったわけですか」 「ええ、……まあ」 「ここまできたら訊いてしまいますけど、夜……あるんですか」 「ありますよ、普通に。ただ、懐妊しないように薬を飲まないとさせてくれませんけど」 「え……」 「こちらこそ、ここまできたら言ってしまいますけど、まだ彼女……子供という存在を受け入れられないんです。国のためだけに誕生させられる命ですから」 「そうですか……」 「なのでもう、私などはできてしまえばどうにかなるんじゃないか、と。薬のことを忘れるくらいの場所へ……ってことです」 「あー……、それは激しくお邪魔してしまったようで」 「でも、あんなに楽しそうな顔、久しぶりに見ましたから」  白髪のティオと頭を並べて、輝く湖面を指さしている。
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