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プロローグ
「さようなら」
アウギスはこいびとに言いました。
ティオがけっこんするには地上へ行き、百人のにんげんからなる百のかんしゃでできたゆびわを授からなければいけないのです。
「いつも見てるね、それ。買わないの?」
「あ」
白髪のティオは絵本から視線をあげた。
顔見知りの店主がにこにこと話しかけていた。
「うん。これは……いいんだ」
苦難のページをとばし、指輪を授かったティオ・アウギスが、再会の池で彼女に求婚するところをひらく。
「僕と、けっこんしてください」
こいびとは泣きながらうなずきました。待っていたときは長かったけれど、忘れてしまいそうなほど幸せでした。
「結婚したいひとでもいるのかい?」
「そっ、そんなひといないよ。ぼく、まだ半年の養育もすんでないし、天使さまに名前ももらってないティオなんだよ」
恋人はいる。
でも、そのひとは自分と同じ男性だ。
どんなに結婚したくても、できない。
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