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イグノトルは使いやすいように包帯の外装をほどき、個包装にしてから引き出しにしまった。
「そりゃ、ここは国の公費でまかなってるから、こういうのでもなるべく安いのをと思って注文してるけどね。身分の高い方々は、お気に召さないみたいだよ」
「そう言うあなただって、身分はやたら高いじゃないか」
「だからこそ、私がケチケチしてるのが嫌だそうだよ」
「……よくわからないけど」
「私は親の爵位を継いだだけなのにねえ。元は平民の息子が貴族面さらしてちゃみっともないでしょ」
「え、でも……公爵って王家の血筋のひとだよね?」
「母がね。でも血筋的にはもうずいぶん薄まってるんだけど、一人娘だったからこのままじゃ家がなくなるってんで、やむなく婿養子を取ったのが平民の父。結婚して、なにを思ったか突然に家族をほったらかして医師になるとか言い出して、まあ、なれたんだからいいんだけどさあ」
「それがどして患者さん、気に入らないのかな」
「自分が浪費してるからじゃないのかい。金で買えるものは、額面の価値しかないのにねえ」
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