1 花火

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1-3-9 「でも、国王さまはイグノトルさまのしてること、ちゃんとわかってくださるよ」 「彼女は地上育ちだから、一般大衆的な物の考えをする。でも、昔からある貴族は、そうじゃない」 「そっか……むずかしいんだね」 「国王より、私を見てくれる?」 「えっ」  にこりと微笑んだ。  どくん、と胸が鳴る。  そのまま、いとおしそうな顔で、じっと見つめてくる。  なにか言わなくちゃ、とティオは焦った。 「ああっ、そうだっ。本屋さんの店主さんがね、えっと、なんだったかな。どくり……つ」 「……ん? 本屋さん?」 「あっ」 「また寄り道したねっ」 「だって絵本が見たかったんだ。あ、これ、ちょうど注文してたのが入ったよって」 「待ちきれなかったのかい?」 「……うん」  それもあるけど、アウギスの絵本が読みたかった。 「これね、私がまだ病院にいたころ、入院患者に人気のあった絵本でね、もうあまり見かけなくなったから、取り寄せてもらったんだよ。今夜、眠るときに読んであげようね」 「うんっ」
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