292人が本棚に入れています
本棚に追加
『そういえば、嬢ちゃんの名前、まだ聞いてなかったな。』
鷲さんが私の2、3メートル前を飛びながら話す。
そういえばトイレ云々で忘れてたな、自己紹介。
「私は斎藤蒼。
鷲さんの名前は?」
ファンタジーな異世界に来たからって私は自分の名前は捨てない。
この世界でも私は私。
そう思って、前世、になるのか?
まぁいいや。前世の名前を名乗った。
そういえば異世界ってやっぱり名前カタカナなのかな。
私のイメージ的にはカタカナなんだけどなー。
『蒼か。よろしく、蒼。
俺達動物には特に名前は決まってなくてな。
なんとなくで通じてるからあんまり必要としねぇんだよ。
不便なら蒼が付けてくれ、名前。』
……動物たちはやっぱり鳴き声とかで判別するのかな。
よくわかんないから鷲さんに名前付けようそうしよう。
「じゃあ名前付けさせてもらおう!
特に不便じゃないとは思うけどね。」
ちょっと憧れだったんだよね。
その人(鷲さんは人じゃないけど。)に合った名前を付けること。
鷲さんなんか渋いからなー。
漢字とかの方が似合いそうだなー。
「晄 コウ、とかどう?」
さっきから前飛んでるのを見てて思ったんだけど、鷲さん、羽めっちゃ綺麗なんだよね。
なんかフサフサなんだけど、艶々っていうか。
ってことでキラキラな晄、と。
「鷲さん、字読める?
日に光って書くんだけどね。」
『……蒼、それ漢字のこと言ってるだろ。
……はー、そう来たか。』
空中に指で文字を書いていると、鷲さんが器用にも片方の翼で飛びながら、もう片方の翼で頭を押さえた。
ファンタジーらしく訳の分かんない象形文字みたいなの使ってるかと思ったけど、どうやら鷲さんは漢字を知っているらしい。
何で鷲さんが漢字知ってる前提で話したとか訊くのはやめていただきたい。
ちょっとワンチャンあるかなって思っただけなんです出来心なんです。
最初のコメントを投稿しよう!