292人が本棚に入れています
本棚に追加
『蒼、この世界では漢字は使われてない。
まぁ言うなら象形文字みたいなのだ。
あまり前世でのことは言わない方が身のためだぞ?』
鷲さんはそう言って、あぁ、そうだ、と続けた。
『晄って名前、気に入った。
是非使わせてもらうぜ。』
「え、本当に?
嫌だったら他の名前考えるからね、気とか使わないでよ?
大事なものだから。」
大事なものを決めさせてもらってるんだから、お互い妥協はしちゃ駄目だよ。
何度か確認を取ったけど、鷲さんは笑って私にお礼を言うばかりだった。
「じゃあ鷲さん改め晄、よろしくね。」
『おう、こっちこそよろしく。
さて、話をしてる間に見えてきたぜ、俺達の棲みかが。』
木々のざわめきと晄の鳴き声が森中に響き渡った時、私の目には、素晴らしい情景が映った。
二足歩行で荷物を運ぶライオンに、空を翔る犬、尻尾で杖を持って魔法を使う猫。
『ようこそ、俺たちの棲みかへ。』
晄の声に、はっと我にかえった私は、歓声をあげた。
「晄!晄!!
すっごいな、ここ!!
もうまじファンタジーすぎてファンタジーだわ!!」
自分でも支離滅裂だと思う文章を口走りながら、辺りを忙しなく見回す。
おお、おお!!
でっかい銀の狼!!
あそこにいるのドラゴンじゃね?!
服着た二足歩行の豚とかもいるー!!
やっべ、まじ興奮するー!!
『蒼ー?
興奮してるとこ悪いけどよー、ちょっくら戻ってきてくれ。
皆すんげぇ蒼にびっくりしてっから。』
周りを見ることに必死だったから気がつかなかったけど、晄に言われて、動物たちが私を(円らな瞳で)見つめていた。
うへへ、めっちゃ可愛い。
最初のコメントを投稿しよう!