神様こんにちは!

8/9
前へ
/80ページ
次へ
「蒼。 此方へ。」 長時間見れないと思ったその直後、神様にそう言われ、心が読まれたかとびくびくしながら少しずつ近寄る。 神様にこんなにも近づいていいのか、いや、よくない。 一人でそんなことを考えていると、ぐっ、と手を引かれ、抱擁された。 発狂するかと思った。 「そう強ばるな。 再構築しているだけだ、息を吐け。」 そっと耳元で囁かれる声に、全身の力を抜いて、神様に身体を預ける。 まるで昔からずっと知っていたような温かさに、一筋の涙を流した。 少しだけ力が込められたような気がしたその腕は、やっぱり消えたり形が変わっていた。 こうして私は地球の身体を魔法世界の身体に構築し直し、神様と離れた。 「……違和感とか、ないんですね……」 それはそれで変な感じだ。 「貴方の身体だ、違和感など合ってはおかしいだろう」 ……そういうもんなのか。 「さぁ、これで貴女の身体の構築は終わった。 次に魔法世界へと貴女を移動させる。 向こうに着けばそこから貴方の新たな人生が始まる。」 「……そうですか。 有り難うございました。 あの、一つだけ、お願いしてもいいですか…?」 向こうに着けばもう2度と神様とは会えない。 なら、ここで言うしかない。 恐いけど言うしかないんだ。 「何だ?」 「……私の関係者1人ひとりに、何か幸せを与えて下さいませんか。」 ……特に、家族に。 家族のせいで死んだんじゃない。 でも悲しむことに代わりはないと思うから。 ないとは思うけど、悲しまないかもしれない。 それでも。 「今までお世話になったのに、何も返せてないから、せめて幸せを。」 私がいなくても悲しみに暮れないように。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

292人が本棚に入れています
本棚に追加