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「蒼。
此方へ。」
長時間見れないと思ったその直後、神様にそう言われ、心が読まれたかとびくびくしながら少しずつ近寄る。
神様にこんなにも近づいていいのか、いや、よくない。
一人でそんなことを考えていると、ぐっ、と手を引かれ、抱擁された。
発狂するかと思った。
「そう強ばるな。
再構築しているだけだ、息を吐け。」
そっと耳元で囁かれる声に、全身の力を抜いて、神様に身体を預ける。
まるで昔からずっと知っていたような温かさに、一筋の涙を流した。
少しだけ力が込められたような気がしたその腕は、やっぱり消えたり形が変わっていた。
こうして私は地球の身体を魔法世界の身体に構築し直し、神様と離れた。
「……違和感とか、ないんですね……」
それはそれで変な感じだ。
「貴方の身体だ、違和感など合ってはおかしいだろう」
……そういうもんなのか。
「さぁ、これで貴女の身体の構築は終わった。
次に魔法世界へと貴女を移動させる。
向こうに着けばそこから貴方の新たな人生が始まる。」
「……そうですか。
有り難うございました。
あの、一つだけ、お願いしてもいいですか…?」
向こうに着けばもう2度と神様とは会えない。
なら、ここで言うしかない。
恐いけど言うしかないんだ。
「何だ?」
「……私の関係者1人ひとりに、何か幸せを与えて下さいませんか。」
……特に、家族に。
家族のせいで死んだんじゃない。
でも悲しむことに代わりはないと思うから。
ないとは思うけど、悲しまないかもしれない。
それでも。
「今までお世話になったのに、何も返せてないから、せめて幸せを。」
私がいなくても悲しみに暮れないように。
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