第1章

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教室の戸を開けたら、そこには 樹齢30年の柿の木が枝葉を広げていた。 1年1組、通称「柿組」、この教室の真ん中に生えている柿の木は、俺が学生だった頃にも生えていた。 ぶっちゃけ、凄い邪魔である。 幹は太くないくせに、枝葉が繁りまくっていて、蛍光灯の光を遮っている。 「先生~見えませ~ん。」 可愛い生徒達は黒板よりも、先生である俺の声を頼りにノートを書いている。 その結果、柿組の成績は学年平均よりも高い。 何故か? 真面目に授業を受けているせいではない。 生徒の「ユラユラ作戦」の結果だ。 「ユラユラ作戦」とは、柿の木の後ろで左右にユラユラと揺れ、いかにも「柿の木が邪魔で黒板が見えない」というアピールをする作戦だ。 テスト近くになると、先生が生徒に良い点数を取らせる為、テストに出す所はしつこく説明したり何度も話したりする。 そこでこの「ユラユラ作戦」だ。 先生の「点数を取らせたい」という心理から、同じ言葉を黒板に書いたり、説明をリピートしてしまう。 その結果、生徒達はテスト前にテスト問題が分かってしまうという柿の木を利用した作戦だ。 そして、それは先生達も知っていた。 ユラユラと生徒が揺れるジェスチャーは、テスト問題を聞き出そうとしているのだと。 「良いんじゃないですか? テスト勉強しようとしているんですから。」 先生の方が一枚上手である。 入学して数ヶ月の生徒よりも、何年も授業を受け持っている先生の方が対策は万全だ。 テストに関係ない時は、 「見える所に机を動かしなさい」 なんて突き放す先生もいる位だ。
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