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まぁくんの方が見られない。
きっとあの時みたいな切なくて苦しそうな顔をしているに違いない……
どうしたらいいのかわからなくて、何の言葉も出てこない。
私より先にまぁくんが口を開いた。
「良かったじゃん!やっと彼氏出来て。しかもイケメン彼氏!」
「ありがと、まさひろ!彼が家まで送ってくれるって言うんだけど一緒でもいい?」
まぁくんが答える前に私は怒鳴った。
「まって……」
でも次の言葉が出てこない。「まぁくんを傷つけないで」と怒鳴りたかったけど、まぁくんが必死に気持ちを隠しているのにそんなことは言えない。
怒った口調のまま私は続けた。
「邪魔したくないし、私帰る」
その場から逃げだすように走り去った。
階段を駆け下りて、校門をぬけて、いつもの帰り道とはぜんぜん違う方向にむかい走る。
全速力で走って息が苦しい。でもそれ以上にまぁくんの気持ちを考えたら胸が苦しい。
好きな人に好きって言うことすらできない……
あんな平気な振りをしなくちゃいけないまぁくんはすごく痛々しかった。
辛い時に辛い顔してくれなきゃ、何にもしてあげられないじゃん。
自分の無力さがいやになる。
私は走った。走って、走って、何処に向かって走ればいいのかわからないままに闇雲に走った。
だんだんと近づいてくる足音。
「おい!乙葉どこ行くんだよ?」
手首を掴まれて思わず振り返る。
息を切らしたまぁくんが追いかけてきていた。
「まぁくん……」
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