0.私と光君の出会い

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「では、貴女が新しい物語を書くのは如何」   女は経典を読むのでさえ厭われた時代。 漢文を読みこなす女などさぞ珍しかったことでしょう。 幼い頃父は年の近い兄と私を比べ「おまえが男子(おのこ)であったなら」と何度申していたことでしょうか。 しかしそう嘆きながらも、私が望むように教育を施してくださった父には感謝しかありません。 お蔭で夫亡き後も、私はこうして生活することが出来ているのですから。   若い頃は女房という仕事を卑しいものだと思っておりました。 表向きは高貴な御方にお仕えする使用人、裏では寝所で主や客人の相手をすることも厭わない売春婦。 婚期を逃し、このまま一生独り身かもしれないと思った時でさえ、それでも女房として外で働くことだけは選べませんでした。 夫の死後、宮仕えのお話を聞いた時も正直躊躇いがありました。 宮仕えとは言っても、お仕えする所が変わるだけで、結局は女房という仕事に変わりはないと思っていたからです。
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