0.私と光君の出会い

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しかし断れるはずもございません。 時の関白殿下の御命令でしたし、私が宮仕えに出れば父や兄の処遇も変わるかもしれないと思ったからです。 仕方なく始めた宮仕えでしたが、今では楽しいとも思えるようになっていました。 それもすべて目の前のこの御方のおかげです。   美しいこの御方は中宮彰子(ちゅうぐうしょうし)様。 今上帝の後宮の中一番に輝く御方です。 女が漢文などと言われ続けた私にとって、私の能力を初めて認めて下さった御方でした。 (みや)様は私の知識を他の者にはない武器だと仰って下さいました。 本来であれば言葉を交わすことはおろか、拝顔することさえかなわない御方にそのあたたかい言葉をいただいた時から、私は生涯この御方にお仕えしようと決めたのでした。   ですが…この御方は時折こうして、私を困らせるようなことを仰るのです。
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