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それはいつもの日のことでした。
選子内親王から何か面白い物語はないかと尋ねられたそうなのです。
そして「貴女何か面白い物語知らない?」と彰子様は私にお尋ねになられたのでした。
なんとも難しい御質問です。
選子内親王様といえば当代随一の文化人。
そんな御方に物語をお薦めするなど恐れ多くてできるはずがございません。
私は正直にお薦めできる物などないと答えました。
するとあろうことか宮様は先程の言葉を口になさったのです。
断ることなどできるはずがございません。
私は自作の物語を作ることになりました。
まわりの女房達からは名誉なことだと羨ましがられましたが、私は喜ぶことなどできませんでした。
物語を読むのも、空想の話を考えるのも好きでしたが、それはあくまで個人的なものです。
当代一の文化人と誉れ高き選子様にお薦めできるほどのものが書けるかどうか…。
そもそも、私の書く物語は他の方々に読んでいただくほどのものなのかどうか…。
もしつまらないものでも献上すれば、彰子様の恥になる。
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