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私には今ある物語を超えるものを書く自信もなく、かといって書く以外にこの状況を打破できるものはありません。
時間が経てば経つほど周りの期待も大きくなっていきます。
困り果てた私は物語を書くという名目で寺に籠ることにしたのです。
琵琶湖からほど近い山の上に建つその寺で私はずっと考え続けました。
こうして自分を追い込めば何か思い浮かぶかもしれないとも思いましたが、そう簡単にはいかないようです。
何日も考え続け、それでも思い浮かばないので御仏にお祈りをし……。
それはある晩のことでした。
祈り疲れた私は、外の空気を吸おうと戸を開けました。
するとどうでしょう。
目の前には言葉にできないほど美しい風景が広がっていました。
静かな夜。
眼下には巨大な琵琶の湖。
そこに映るのは――
私は空を仰ぎ見ました。
冷たく輝く白い月は、痛いほどに私を照らしていました。
月というものは、こんなに美しいものだったでしょうか。
私は、今までの人生で何度も見たはずの月にただ見惚れていました。
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