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二日目にして本格的に活動を再開したのか、にぎやかな音がどこかしからも聞こえてくる。
(どこに入ろうかなあ)
悩んでしまう。中学校のころは魅怜につき合うかたちで由姫も部活に入っていなかった。
絵を描くのも好きだし、料理をするのも好きだったし、運動はできないけれど見るのが好きだったから、よく魅怜の応援にも行った。
部活には入らなかったけれど、委員会にはよく入っていたし。
(……うーん、でも、わたしって中途半端だ)
ため息を吐いてしまう。
魅怜はどこに行ってもだいじょうぶだろう。でも、わたしは――変わらないといけないのに、でも、
視線をどこかに移したときだった。さまようように。帰る家がわからなくなった迷い子のように。
そのとき、花びらがまた入ってきたのだ。窓から、ひらひら、と。
あのときの光景を思い出し、由姫はまた導かれるように運ばれてきた花びらの場所へと向かっていた。
呼ばれている気がしたのだ。
蒼だった。
一歩外に出てみれば空は晴れわたるような蒼で、雲ひとつない日だった。
運動部は見るつもりがなかった。運動音痴だから運動部などに入ったら迷惑がかかるだけだと思っていたから、最初から見る気がなかったのだ。文化部ですらもああなのだ。運動部など将来プロを目指すような上手なひとしかいないだろうと思っていたから、だから。
魅怜に何を言われても最後の最後に見ようと思っていのに。なのに、こんなにも早く。
花びらがふっている。ひらひら、ひらひら。導かれているかのように、由姫はそこへと向かっていた。――グラウンドが、薄紅色の波紋を浮かべていた。
――ああ、やはり、呼ばれていたとしかいいようがなかった。あの日、あのように。
わたしは彼に恋をするために、恋をしてしまうように、できていたのだと。何度泣きながらでも、でも、胸を張って言えるのだろう。
カッキーン! と、軽快な音がした。
蒼一色に、白の玉が映えた。歓声が響きわたる。
「よっしゃあ! 俺の勝ちだー!!」
精悍なからだが跳ねる。薄紅色の波紋を崩すように、散らすかのように、彼はかけて行く。
かけて、かけて、ヘルメットが落ちた。金の髪が、太陽にと光り輝く。
きらきら、きらきら。彼を、世界が、照らしてゆく。
「くっそー太陽のまたひとり勝ちかよー!そりゃあねーぜ!」
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