第1章

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 きっと隣で肩を並べて歩く私を見て、誰だあいつ・・・なんて不審に思う人もいるかもしれない。いや、私の存在はあまりに薄すぎて、みんな王子にしか目がいっていないようにも見えるけど、私自身、信じられないくらいだから仕方ないと思う。 「聞いたよ、月花ちゃん・・・クラス委員に選ばれたんだって?」  もやもや考えを巡らせていた私の心情なんてこれっぽっちもわからないであろう王子は思い出したと言わんばかりにちらっと私に視線を向ける。 「は、はめられたの・・・」 「はは、大げさだよ」  ほんとにほんとなのに・・・ 「ふん。どうせ王子だってまた選ばれたんじゃないの?」  あんまり楽しそうに笑う王子にすこしいらっとして言い返してやると、どうやら図星だったようで、彼の笑顔が消えた。 「はめられた」 「ちょ、大げさなのはどっちよ!」  むっとしたように私を見る王子に内心ドキッとしたが、私は気付かないことにした。  相変わらず女の子たちの視線がとても痛かったが、不思議とこうして王子と会話が弾み始めるとあまり気にならなくなるものだ。 「いや、おれの場合、絶対はめられてるって!去年からずっとやらされてるんだけど、クラス委員・・・おかしいと思わない?」 「仕方ないよ。王子は超が付くほど賢いし、気が利くし、なんていうか、人をまとめる力もあるし、王子ほどクラス委員に向いてる人はいないと思うよ」  それに比べて、私は・・・とまた悲観的になりそうだったけど、王子が何か言いたそうで言えない様子がとてもおかしくて思わず吹き出してしまった。 「ほ、ほめすぎ・・・」 「ほんとのことだし!」  彼にこんな表情をさせることができるなんて、優越感に浸ってもいいかもしれない。 「誰もが知ってるよ。学園の王子様!」  笑っていってやろうと思ったけど、最後の方だけ皮肉っぽい言い方になってしまい、彼に気付かれないかすこしひやっとした。  誰もが知ってる、学園の王子様。 顔よし、頭よし、長身で優しくて、いつも輝かしい笑顔が絶えない人。 それにこの人、AからG組まである中のトップクラスのAクラスに在籍する人物で、入学してからずっと、試験ではトップをキープしているようなお方なのである。 何をさせても完璧で、『大路』という名前が来たら、女の子たちはもう『王子』って呼ぶしかないでしょう!
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