第1章

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 彼は私と同じ中学校出身のサッカー部の男の子。  そして、私の好きな人・・・だと王子は勝手に思い込んでいる。一年の時からずっと。  まぁ、そのおかげで王子に近づくことができるようになったといっても過言じゃないけど・・・それでも胸にちくちくと感じる痛みを気のせいということでかたづけるわけにはいかない。  彼が鳥羽くんについて口にするたびに、ああ、この人の目に私は映っていないんだなって実感することが増えた。最初は苦しくて、泣きそうだったこともあるけど、それ以上に彼に近づけるならと私はいつもあいまいな対応ばかりしてきてしまった。そう、王子が勘違いをそのまま信じてしまったことは、私自身の責任でもある。  私は、王子が大好きだった。  今まで人を見てドキドキしたこともなかったし、誰かと好きになったことさえなかった。  すべて、彼が初めてだった。  だけど、彼の周りにはいつもC組以上の女の子たちがバリアを張っていて近づくことさえあり得なかったし、かといってクラスに行きたくてもA組と我らがE組とは当さえも違っていて、本当に彼を遠くで見ているのが精いっぱいだった。たまに堂々と会うことのできる全校集会の時だけで我慢しようと思っていたほどだった。  そんな時、私は見つけてしまったのだ。  彼を見つめることのできる絶好の場所を。  それは四階にある音楽室。  あの日、あれは紅葉がとっても見ごろになった秋のことかな。お祭り騒ぎだった秋の行事がすべて終わってさて、期末試験に身を入れよう!と意気込んだあの頃。高校一年生だった私は担任の先生に頼まれて、大きな荷物を一人で運ばされることになった。  中身も何かわからず、私はあの時ただただ大きな段ボールを一人で抱えて四階のフロアまでのぼり、少しピリピリしていた。志乃は陸上部で、南は家庭部。二人ともいない時に頼まなくてもいいじゃない!と独り言を繰り返していたように思う。  それが、私の運命を変える瞬間になるとも知らずに。  音楽室の窓から、三界の生徒会室がよく見える距離だとわかるまで。  心臓が大きくはずんだように思えた。  だって、ここからは窓側の席に座っている王子の後姿がよく見えたのだから。  それからは、ここは私の秘密の場所となった。
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