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さよなら、五秒前
OP
わたし、緑川亜弓。
もう時間がないから、急いでいうけど。
――あなたが好きなの。
1
「……というメールを受け取ってしまった」
私は友子にいう。
四限目の授業中に、突如、わけの分からぬメールを受け取ったのだ。
「何それ? 間違い? 悪戯? もしくは普通に告白?」
「私、女なんだけど」
名前からして――女だろうし。
高校の昼休み。
私は友子の前の席にすわらせてもらい、お弁当を向かい合って食べている。
彼女の家のお弁当はいつもバラエティ豊かで、海苔や佃煮が目立つ我が家とは大違いだ。
「いいじゃない、百合とかさ。百合百合とかさ。せっかく一七の夏なんだから、あんたも新しい道を進んだら?」
「友子のはただ漫画にはまっただけでしょう。――別に、私は、その――」
「ていうかさ、このアドレスに送り返して聞けばいいんじゃないの?」友子は言う。「何、嫌なの?」
「……だ、だって」
叩かれた。
「い、痛いってばー」
「もじもじすんな! もう、やんわりと百合を拒絶したいような素振りしてたくせに、いざってなると照れやがって」と、友子はぷんすか怒り出す。激おこぷんぷん丸を具現化したら、の分かりやすい図ができた。
「ほら、いいからメール送ってみ」
「……ん、んぅ」私は、返信ボタンを押して、ぶ、文章は。「どうしよう?」
「………」友子は、私と向かい合わせて座っているはずなのに。視線は同じはずなのに。こちらを激しく見下すような視線でため息をついた。「あんた、誰? でいいんじゃない?」
「そ、そんな無愛想な」
「あんたは、このメールの相手とどうしたいのよ……」
2
自分でもどうしたいのか分からない。
多分、ただの勘違いだと思うんだけど。間違いだと思うんだけど。
……いや、もしかしたら。
あれこれと考える。
もしかしたら、これは百年後の私――転生した私が百年前の私に送った――ダメだ。自分でも途中からわけ分からなくなった。いやでも、他には例えばこれならどうだ。これは実は暗号文で、これを送った人は実はもう死んでいて――
「こわいわ!」
ただいま、自宅。
夜の七時。
テレビを点ければ、あってないようなバラエティ番組がやってるかもしれないが。
私は自室のリモコンがどこにいったか分からない。
かといって、わざわざテレビ様に近寄って頭を垂れるほど誇りを失ってもいない。
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