長い廊下

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長い廊下

 ああ、放っておきゃよかった。やっぱり忘れ物なんて取りに来るんじゃなかった。  明日が提出期限の宿題がある。そのことに気がついたのは部活が終わった直後だ。  まだ校舎に入れたので、みんなには先に帰ってもらい、三階の教室まで提出物のノートを取りに行った。  部室を出た時にはまだ明るかったのに、上まで来る間にすっかり日が暮れて、目の前には長く暗い廊下が伸びている。  教室が階段脇とかならよかったのに、残念ながらウチのクラスは校舎のど真ん中にある。  いつもはほんの十数メートルの道のりが、ひたすら長く遠く感じる。  …そういやウチの学校、出るって噂がなかったっけ?  いやいやいやいや。ウチに限らず、学校なんてものには、七不思議とか、いわくつきの噂が存在しているものだ。  何もない。ある訳がない。  ただ、日が暮れて暗くなってるだけのいつもの廊下を、教室まで歩くだけ。忘れ物を取って戻るだけ。  それにしても。  …長いなぁ。遠いなぁ。 * * * 「…っていう話、知ってる?」 「それ、先輩からちょっと聞いたことある」 「確か何年も前に、忘れ物を取りに行ったまま行方不明になったっていう、男子生徒の話だよね?」 「靴箱に靴が残ってて、校舎から出た形跡がないのに、忽然といなくなったってヤツ」 「やだー。そういう話、やめてよー。アタシ、今日日直で、帰るのちょっと遅くなるんだから!」 「そんなに怖がらなくても、しょせん噂。どこにでもある七不思議だって」 * * *  在校生達が、ありえぬ噂と語る七不思議。  その、別世界の物語のように語られる、長く暗く果てしない廊下を、『彼』はいまだに歩き続けている…。 長い廊下…完
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