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「それより、今日は高岡来ないね」
凛の言葉に、楓はまた少し赤くなる。
「あのね、一昨日、正臣くん待ってる間に寝ちゃってて、古語辞典返しに来てくれてたみたいなんだけど、正臣くんが来たら、ふいって出て行っちゃってそれきりなんだよね」
「付き合ってるって、話したの?」
楓は一昨日のことを思いだす。
「ううん。高岡が教室出ていってから告られたから」
凛はちょっと考えて、なるほどね、と呟いた。
「アンタ、これからは必要以上に高岡と絡まないほうがいいよ」
「へ?なんで?」
「逆の立場で考えてみなよ。会長が他の女の子と絡んでたら嫌でしょ?」
確かに。
正臣は何もいわなかったけど、やっぱりいい気分はしなかっただろう。
窓の向こう側にある、理系コースの校舎を見る。
と、正臣と目があった、気がした。
小さく手を振ってみる。
正臣も一瞬手を振って、目が逸らされてしまった。
私、また何か間違えたかな…
気分が落ち込みかけたその時、スマホが振動した。
正臣からのLINEだ。
『初めて目が合ったね。でも、手を振るのはちょっと恥ずかしい』
恥ずかしかったから、目を逸らしたんだ。
なんだ、よかった。
『ごめん。手を振るのはさすがに目立つよね。でもこうしてLINEでやり取りできるの、嬉しい』
しばらく間があって、またメッセージ。
『うん。俺も』
スマホを見てニマニマしていた楓の頭にチョップしてきたのは、もちろん凛。
「はいそこー。デレデレして見せつけないのー」
「あ、ごめん」
照れ隠しに慌ててお弁当を片付ける。
「独り者には目の毒だけど、日曜の報告、楽しみにしてるからね」
意味ありげに言われた。
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