side 楓 8

3/3
1755人が本棚に入れています
本棚に追加
/664ページ
「それより、今日は高岡来ないね」 凛の言葉に、楓はまた少し赤くなる。 「あのね、一昨日、正臣くん待ってる間に寝ちゃってて、古語辞典返しに来てくれてたみたいなんだけど、正臣くんが来たら、ふいって出て行っちゃってそれきりなんだよね」 「付き合ってるって、話したの?」 楓は一昨日のことを思いだす。 「ううん。高岡が教室出ていってから告られたから」 凛はちょっと考えて、なるほどね、と呟いた。 「アンタ、これからは必要以上に高岡と絡まないほうがいいよ」 「へ?なんで?」 「逆の立場で考えてみなよ。会長が他の女の子と絡んでたら嫌でしょ?」 確かに。 正臣は何もいわなかったけど、やっぱりいい気分はしなかっただろう。 窓の向こう側にある、理系コースの校舎を見る。 と、正臣と目があった、気がした。 小さく手を振ってみる。 正臣も一瞬手を振って、目が逸らされてしまった。 私、また何か間違えたかな… 気分が落ち込みかけたその時、スマホが振動した。 正臣からのLINEだ。 『初めて目が合ったね。でも、手を振るのはちょっと恥ずかしい』 恥ずかしかったから、目を逸らしたんだ。 なんだ、よかった。 『ごめん。手を振るのはさすがに目立つよね。でもこうしてLINEでやり取りできるの、嬉しい』 しばらく間があって、またメッセージ。 『うん。俺も』 スマホを見てニマニマしていた楓の頭にチョップしてきたのは、もちろん凛。 「はいそこー。デレデレして見せつけないのー」 「あ、ごめん」 照れ隠しに慌ててお弁当を片付ける。 「独り者には目の毒だけど、日曜の報告、楽しみにしてるからね」 意味ありげに言われた。
/664ページ

最初のコメントを投稿しよう!