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「竹山ー!」
教室の入り口で大声で私と名前を呼んで、つかつかと私達のところにやって来たのは、隣のクラスの高岡だ。
去年まで同じクラスだったけど、私が文系特進クラスになって、クラスが別れた。
それでも時々こうして、辞書を貸してくれだのなんだのと遊びに来る。
「次の時間、古典なんだよ。辞書貸してくれ」
ほらね。
私は呆れ顔で古典の辞書を手渡す。
その時、高岡が私の鞄の横に下げられてる紙袋に目をやった。
「なにこれ?誰かにプレゼント?」
私は慌てて紙袋を反対方向のフックに掛けた。
「なんだよ、怪しいなぁ」
「いいから!アンタには関係ないの!」
高岡の肩をバシバシ叩きながら、紙袋から遠ざけた。
「ふーん。ま、いいけどさ」
そんな高岡に、凛は憐れみの目を向けた。
「ちんたらしてるから、横からかっさらわれるのよ」
「は?どういう意味だよ」
「べっつにー」
鈍感と評判の私には、こうして時々、凛の言っている意味が分からないことがある。
いちいち気にしていても仕方ないから無視してるけど。
「私達は話があんのよ。高岡は早く自分のクラスに帰んなよ」
「なんだよ、仲間はずれかよ。まぁいいや。竹山、辞書ありがとな」
そう言うと、高岡くんは私の頭をクシャっと撫でて出ていった。
その時の私は、気付いてなかったんだ。
反対側の理系校舎から、私達を見ている人がいるなんて。
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