side 楓 1

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どれくらい眠っていたのか、目が覚めた時にはすっかり辺りは暗くなっていた。 「あぁ、やっと起きたか」 突然すぐ側で聞こえた低い声にギョッとしてあたりを見回すと、前の席に誰かが座っていた。 「…………松成、会長?」 前の席で楓を見据えているのは、この学校の生徒会長。 割と辛辣な男だという噂は耳にするが、楓はよく知らない。 何度か職員室で見たことがある程度。 松成は理系コースで文系コースの楓とは共通の友人もいない。 その彼が、なぜここにいるのか。 楓の混乱は、すべてお見通しなのか、松成は軽く鼻で笑った。 「居残りがいないか見回りをしていたら、盛りのついた犬のような奴らがいたから、取り敢えず蹴散らした。 んで、念の為に教室の中を覗いたら、あんたがグゥグゥと寝てたんだよ」 遠慮のない物言いに、色々恥ずかしくて顔が赤くなる。 「ごめん。すぐ帰るから」 そそくさと鞄を持って立ち上がった楓の腕を、松成が捉えた。 「もう暗いし、途中まで送る」 有無を言わせぬ強い口調に気圧されてつい頷くと、松成はほんの一瞬頬を緩めた。 「じゃ、帰るぞ」 これが放課後マジックなのか。 歩き出した松成の背を追いながら思う。 だって、あの一瞬の笑顔らしき表情に、楓は確かに捉えられてしまったのだから。
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