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放課後、胸にもやもやしたものを抱えながら、俺は楓のクラスに行った。
昼休みに見えたのは、楓が他の男と仲良さそうにじゃれあっている姿。
付き合っているわけではないだろう。
じゃなきゃ、俺と一緒に帰ったり、デートしたりなんてするわけない。
楓にだって、仲の良い男友達の一人や二人いてもおかしくはない。
おかしくはないが、面白くもない。
楓のクラスにつくとドアが閉まっていた。
開けようとして、ふとガラス窓の向こうに見える光景に腕が止まった。
いつかと同じように、窓の方を向いて机に突っ伏して寝ている楓。
その前の席に座って、じっと楓を見つめている、男。
たぶん、今日の昼休みにじゃれ合っていた男だ。
そいつが席を立って、楓の側による。
顔を近づけたのを見た瞬間、俺は音を立ててドアを開けた。
ビクッとして男がこちらを見る。
やましいことをしようとしてました!と言わんばかりの表情だ。
「松成、会長?なんでここに……」
俺はそいつを無視して、楓の席まで行った。
「楓、起きて。帰るよ」
「ん、正臣くん?」
「ほんと、無防備だなぁ。昨日言ったばかりなのに」
へ?と楓はキョロキョロして、友達の男を見つけると、ちょっと気まずい顔をした。
「アンタ、何してんのよ」
「お、俺はっ、古語辞典を返しに…」
「あぁ」
楓がそっけなく受け取ると、男は出ていった。
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