side 正臣 6

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「あのっ、正臣くん。昨日はありがと。それで、これ」 持ってきていた紙袋をズイッと手渡す。 中を確認すると、昨日貸したシャツと、手作りらしいクッキーが入っていた。   「手作り?」 「うん、お礼っていうか」 正臣は紙袋を持ったまま、楓を抱きしめた。 いつになく大胆なのは、ドアの向こうでさっきの男が様子をうかがってるのが見えたからだ。   「ありがとな、楓。……好きだよ」  今落とさないと、アイツに取られるってことはわかっている。 だから、正直に思いの丈を、ぶつけた。 「俺と付き合ってよ、楓」 「ほ、本気?」  「好きじゃなきゃ、キスなんて出来ないでしょ。前から、ずっと好きだったよ」 男に見せつけるように、唇を啄む。 「楓の気持ちは?」 唇を啄みながら聞く。 これでOKがでなければ、何もかも終わりだ。 「んっ、ふっ…私も。私も正臣くんが好き」 俺、心の中でガッツポーズ。  あの日、思い切って声をかけてみてよかった。 じゃなければ、今頃こんなふうに楓を腕の中に閉じ込めるなんてこと、出来なかった。  ドアの向こうの気配を感じながら、キスを深くしていく。 舌を入れた瞬間は硬直した楓だけど、ゆっくり時間をかけて口内を犯すうちに、しがみつくように俺の背に腕を回した。 やっと、楓を俺のものに出来た瞬間だった。  気がつけば、ドアの窓から男の気配はなくなっていた。
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