side 楓 7

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 正臣くんに、キスされた。 それも、水族館の時みたいな軽いやつじゃなくて、もっとがっつりした本格的なやつ。 フワフワした気分のまま、今は2人で帰りの電車に乗っている。 「正臣くんは、いつから私のこと好きだったの?」 「ん?いつから?」   電車から降りて、勇気をだして聞いてみると、正臣は人気のなくなった公園のベンチに楓を誘った。 「職員室でたまに顔合わせてただろ? 最初は用事を押し付けられて要領の悪い奴だなって思ってたんだけど」 正臣は噂通り辛辣だ。 そんなにはっきり言わなくてもいいのに。 「それが、いつの間にか助けてやりたくて、俺に甘えさせてやりたくなって、 気がついたら好きになってた。 初めて一緒に帰った日より、だいぶ前だよ。楓は、一緒に帰るようになってからだろ?」 言い当てられて頷く。 なんで凛といい正臣くんといい、何でも分かっちゃうんだろう。 「作戦成功だな」 「作戦?」 「俺を意識してほしくて、一緒に帰ってたんだから」 ボボボっと楓の顔が赤くなる。 それを見て、正臣はニッと笑った。   「かーわい」 頭を引き寄せられて、唇が重なる。 するりと舌が入ってきて、口内を動き回る。 背筋にゾクゾクしたものが走り、思わず正臣の制服を握りしめた。 「んっ……」 このままだと、変な声が出ちゃいそう。 そう思った時、正臣が顔を離した。 「今日はここまで。楓は鈍感で無防備だから、俺のものって、念押し」 そう言うと、楓の手を握って、また家まで歩き出した。
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