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やっと楓と付き合い始めた翌日。
「松成ー、なんか客来てるぞ」
昼休みにクラスメートに言われて教室のドアを見ると、昨日の男が立っていた。
ちょうど弁当を食べ終えて、向かいの校舎の楓を観察してたってのに。
立ちあがって、廊下に出る。
「なに、なんの用?」
「竹山のことだ。お前、付き合ってんのか?」
それを確かめにわざわざ来たのか?
暇な奴。
「付き合ってなきゃ、キスしないだろ?‥‥お前、昨日見てたんじゃないの?」
冷たく言い放つと、相手の顔がカッと赤くなった。
「た、例えば竹山の弱み握ってるとか」
「マンガの読みすぎじゃね?昨日、2人で抱き合ってたとこまでは見てなかったの?」
「………でも、共通点もないのに」
俺は冷たい目を向けたまま、言葉を続けた。
「馴れ初めまで話してやる義理はないけど、少なくとも無防備に寝てる楓にキスするような真似はしてない」
昨日の自分のことだとすぐ分かったのだろう。
悔しげに顔を背けた。
楓は俺のものだ。
誰にも渡すつもりはない。
正臣は切り捨てるように最後の言葉を放った。
「金輪際、人の彼女に気安く近寄らないでくれ。楓から話しかけられたとき以外は話しかけるな。触れるな」
「ふん。見た目によらず独占欲が強いんだな」
自分の独占欲が強いことなんて、とうに自覚している。
そんなんじゃ、俺への攻撃にはならない。
「話がそれだけなら帰ってくれ。俺から話すことはないからな」
余裕の笑みを浮かべて言うと、そいつは唇を噛み締めてこの場を立ち去った。
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