1754人が本棚に入れています
本棚に追加
/664ページ
昼間にそんなことはあったが、帰り道の俺は少し浮かれていた。
何しろ、これまで俺のことを聞いても来なかった楓が、俺の誕生日を聞いてきたのだ。
おまけに、ほしいものはある?と来た。
今欲しいものなんて、1つしかない。
楓自身だ。
やましい気持ちもあるが、年頃の男子としては普通だと思う。
ただ、付き合って早々にそんなことを言えるはずもなく、適当に誤魔化した。
しかし、追い打ちをかけるように次のデートのお誘いまでしてくる楓。
お家デートをご所望の様子。
ほんとに、鈍感というか、擦れてないというか。
男の部屋に上がり込んで、何もなく帰れるとでも思ってるのだろうか。
楓がそんな積極的だとは思えないから、普通に家での勉強デートしか想定していないんだろう。
流石に断るか……
一瞬答えに迷ったが、結局は欲に負けてOKしてしまった。
楓を送った帰り道。
部屋を片付けないとな、とぼんやり思う。
見られて困るようなお年頃映像は全部パソコンの中だから大丈夫。
後は、簡単に整理整頓して、それから…
ベッドのシーツを変えるかどうか、真剣に悩む。
当日そんな雰囲気になれば、やっぱり綺麗な方がいいだろうし、ならないにしても清潔感は大切だ。
土曜の午前に洗濯して、シーツを交換しておくか。
そんな、少しやましいことを考えていたら、スマホが震えた。
見れば、楓からのメッセージ。
楓から送ってくるなんて、初めてだ。
『好き』のスタンプに心臓が跳ねる。
残念ながら、俺の持ってるスタンプにはそんな恋愛絡みのものはない。
「俺も好きだよ」
短く返すのがやっとだった。
最初のコメントを投稿しよう!