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突然――。
「その処刑、ちょっと待ったぁぁぁ!!」
十七、八歳ぐらいの薄い金色の長髪の少年が駆け寄り、手から炎を出して剣の刃を溶かした。その信じられない光景に誰もが驚く。
もっとも一番驚いているのが助けられた少女である。
何故なら、知り合いでもない、まったくの赤の他人だからだ。
唖然とした顔で少年を見ていた、視線に気付いた少年が少女を見て驚愕する。
「あれ、フレイアじゃない。キミ誰?」
「いや、あれ? じゃねぇよ! それ、こっちのセリフだし」
どうやら人違いで少女を助けたらしい。少年の間抜けな言動に少女はつい突っ込んでしまった。
「貴様ぁ、魔法使いか。一体、何の用でこの《魔女》を助ける? 知り合いでは無さそうだが」
呆然としていた老人がハッと我に返って少年に尋ねた。
人違いをした恥ずかしさで苦笑しながら老人に答える。
「あはは、すみません。赤髪の女の子が処刑されると聞いて逸れた知り合いかと思ったんで」
「ならば、もう用は無いだろう。とっとと去れ、この《魔女》を始末しなければならいのでなぁ」
老人がまだ赤く熱を帯びている剣を再び、少女に振り上げようとする。しかし、またしても少年に邪魔をされた。今度は炎ではなく、風で剣を弾いたのだ。
「確かに人違いだったけど、目の前で殺されそうになっている女の子を見殺しには出来ないんでね。この子を連れて行くよ」
まだ唖然としている少女を少年はいきなり小脇に抱えた。突然のことに少女は奇声を発する。
「うひゃ!」
「スィエラ(嵐)」
少年は目を丸くしている少女に構わず手をかざしながら呪文を唱えた。
すると、風が少年達の周りを囲み、目も開けられぬような風が老人や民衆に襲い掛かる。思わず民衆達は目を瞑った。
しばらくして凄まじい風がやみ、恐る恐る目を開けた民衆達は愕然とした。少年と少女がこの場所から消えていたからだ。老人は憎々しげに言い放つ。
「ただちに魔法使いと《魔女》を指名手配しろ!! ワシを虚仮にしたことを後悔させてやるわぃ」
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