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処刑場から逃れた二人は人気のない小屋に降り立った。小脇に抱えられている少女は不機嫌さを隠さず、見知らぬ少年に言う。
「おい、いつまで小脇に抱えているつもりだ? とっとと、オレを降ろせ。ロリコン野郎」
その言葉に少年はやんわりと言う。
「ああ、ごめんよ。今降ろすと言いたいところだけど、キミ口が悪いね。あと、俺はロリコンじゃない。ロリコンって言葉を取り消してくれたら降ろしてあげるよ」
にこにこと笑う少年に、得体の知れない恐怖を感じた少女は若干びびる。
「ろ、ロリコンと言って申し訳ありませんでした! 私を今すぐ降ろして下さい。お願いします!!」
「うん、よろしい。降ろしてあげよう」
思わず、一人称が私になってしまうほどの謝罪をすると、少年から感じていた恐怖が嘘のように消え失せる。そして、約束どおり少女を降ろす。降ろされて安心したのか、少女の腹の虫が盛大に鳴り響く。
「あら、お腹が空いているの? だったらこの赤い林檎はいかが、林檎と同じ髪のお嬢ちゃん」
いきなり少女の目の前に林檎を持った手が現れた。反射的に受け取った少女は驚いて自分の左横を見た。
そこには、大きな薄桃色のリボンをした赤茶髪の七歳ぐらいの幼い子供が大量の果物を持ってにこにこと笑顔で赤髪の少女を見ていた。
「あっ、母さん。何処に行ってたんだよ。街中探したし、お陰で人違いっていう恥ずかしい思いをしたよ」
「バカね、いちいち街中を探したの? 魔力で探知すれば一発じゃない。慌て者の息子ね」
二人の会話から耳を疑う単語が聞こえたのは気のせいだろうか。何より、幼い子供が可愛らしい声でどう見ても年上の少年を息子と呼んでいるのが違和感を否めない。
少女は困惑しながらも素直に林檎を食べていると、不意に赤茶髪の子供が少年に突拍子もないことを言った。
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