第1章

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「母さん、母さん。話しが脱線して愚痴になってるよ」 「あら、やだわ。私ったらつい、ごめんね。えっと、何の話しだっけ? そうそう、龍は実在するわ、なにせ私がその龍なのだから!」  フレイアが自信満々に言ってのけるが、コーネリアは益々不審な目で親子を見る。その様子にギルが頭を抱えながら、母に声を掛ける。 「母さん、ドラ……龍だという証拠を見せなきゃ、意味がないよ。そもそも、幼い少女の姿だと説得力がないし、俺が人違いをする羽目になったんで、成人女性になってくれませんか」 「え~、成人バージョンって結構疲れるのよね。まあいいわ、コーネリアちゃんに信じて貰う為に頑張りますか」  フレイアは渋々ながら頭上に手をかざして目を瞑ると同時に突風が吹き荒れた。コーネリアが瞬きをした瞬間には、幼い子供の姿はなく、代わりに二十代ぐらいの髪を首の下辺りにまとめた美人が立っていた。この女性が先程の子供と同一人物だと分かる部分が顔立ちと髪の色の他に、薄桃色のリボンが髪に結ばれてあることだ。 コーネリアは信じられない光景に信じざる得なかったが、フレイアに疑問を投げ掛ける。 「確かに人じゃないことは分かった。けどな、何で本来の姿に成らなかったんだ? その方が早いんじゃねぇの?」  その指摘に親子は衝撃を受ける。二人して誤魔化し笑いをする。 「「はっ! その手があったか!!」」 「あはははは……。そうだよ、なんで思いつかなかったんだ? 母さん、本来の姿になって見せますか?」 「成れるけど、さっきので魔力消耗したから維持することが出来ないわ。もうすぐで日が暮れるし、夕飯を作らないといけないわよ。コーネリアちゃんも一緒に食べましょう! 暗くなっちゃうし、もうここに泊っちゃいなさい」  もうとっとと帰って二度とこの親子に関わりたくないと思っていた矢先に、フレイアの有無も言わせない迫力に折れて泊る羽目になってしまったコーネリアであった。
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