第1章

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「誰!?」 「――ッ」  脱力した拍子に戸に寄りかかってしまったらしい。からり、と音を立てたせいで彼女に発見されてしまい、僕の喉は一言も声を出せなかった。  うん認めよう。コミュニケーションって、やっぱり簡単なものじゃないよね。よくよく考えれば、さっきの朝の話題も、初対面だと持ち出すまでに時間かかるわ。  そんな新発見をしながら、未だ固まったままの彼女を観察して、実は大層大きな目をしていたのだと分かる。横顔しか見たことがなかったからね。  僕がいたことにびっくりしたのだろう、一層目を丸くしている姿は、年齢よりずっと幼く見えた。 「び、びっくりしたあ。クラスメイト、じゃないよね? 何でここにいるの?」  何でと言われてもなあ。散歩中だったなんてちょっと恥ずかしくて言えなかった。  これでも格好つけたいお年頃なんだ。察してくれ。  首をかしげると、彼女はくすくすと笑いだした。  この年代は箸が転んでもおかしい年頃なんだよって、いつか近所の婆さんが言っていたっけ。あの時も意味が分からなかったけど、その場に出くわしても意味が分からないや。
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