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おとなしいんだね、と彼女は穏やかな瞳で僕を見据えた。
「さっきはカッコ悪いとこ見られちゃったなー。ねえ、皆が来る前にまだ時間あるから、聞いてくれる?」
いいよ、とばかりに僕は近くまで行って、適当に座る。ありがと、とまた彼女は笑った。
「なんていうかなあ。いつも考えすぎちゃうんだ。相手にこう言ったら傷つかないかな、怒らないかな、そんなことばっかり考えて喋るからすごい疲れちゃって」
ちらりとこちらを伺う瞳は、不安に揺れていた。大丈夫、話していいんだよと頷くと、ほっとした様子で話し続ける。
「でも退屈してほしくないから、がっかりしてほしくないから、張り切りすぎちゃって。そのせいかかえって空回りしちゃうんだよね。面白くないとか、ちょっとうざいって中学の時に陰口叩かれていたのも、知ってるし」
人が怖いのかなあ、やっぱり。
ぼんやりと漏らした彼女は、また机に突っ伏した。
初対面だというのに、僕にはあまり緊張しているように見えないんだけど、どういうことやねん、と突っ込みたくなったがやめておいた。
出会いがあんなだったというのもあるけど、僕が女子に「人畜無害系男子」と度々言われていることを彼女が感じ取ったから……、ではないと信じたい。うん。
彼女はそのままの姿勢で、視線だけをくるりとこちらに向け、
「だからね、真っ先に来てせめて挨拶だけは頑張ろうって、決めたのよー。そしたら、無理やりにでも人に慣れるかなってさ」
あっはっは、と全然愉快だと思っていない様子なのに、片手をプラプラさせて笑う。
顔は可愛らしい顔立ちだと思うのに、このそこはかとなく漂う、母親か親戚筋かご近所さん臭は何なのだろうと思いながら、僕はじっと彼女を見つめていた。
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