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それでも、大丈夫だよ。変わろうとこんなに精一杯なんだからさ。
そう伝えたかったけれど、うまく言葉にできそうになかったので、僕は彼女の机の前まで歩いて行く。
たしっと頭の上に手を置いた瞬間、「ふわっ!?」と細い肩を揺らした彼女に伝われと目で語りかける。我ながら不器用すぎるのは自覚していた。
「慰めてくれてるんだね。ありがとう」
どうやら伝わったようだ。どういたしまして、の気持ちを込めて僕もにっこり笑う。
「って、あー! 手に草ついてたみたい。くっついたよ、もうっ。ひどーい」
冗談交じりに口をとがらせて、手櫛で髪型を整えながら、また彼女がくすくす笑う。
二人して和んでいると、階下のほうで声が聞こえたような気がした。つられて時計を見ると、もうそろそろ登校に適した時間になろうとしている。そういえば、行くところがあったのだと思い出して、僕は慌てて教室を飛び出した。
「またね!」との声が背中にかけられて、僕はまた早朝の散歩に繰り出そうと決めたのだった。
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